出演者からのメッセージ
中山 明美 なかやま あけみ ☞プロフィール
今回私が演奏する曲は、ドビュッシー後期を代表する3曲です。
1曲目は、家なき子たちのクリスマス。彼の最後の歌曲です。ドビュッシー自身が作詞しました。当時のヨーロッパは戦火の真っ只中。沢山の愛する人、ものが壊され引き裂かれ、不安とともにみんながなぜこんな事に!!と思った事でしょう。彼の作品ではほとんど見られない、直接的な言葉(ドビュッシーは子供の声の代弁として作詞)で訴えています。
2曲目・3曲目の2つのバラード(叙事詩)は、彼が好んで曲をつけてきた現代新進気鋭の詩人ではなく、フランソワ・ヴィヨンという中世の詩人を取り上げています。中世のパリは、花の都からは程遠く、治安も悪く薄暗く、下水道も発達していませんでした。でもパリはパリ!! みんなの憧れですね。パリの大学で学んだものの彼は、なんと人を殺し、流されてしまうのです。それでも彼の残した作品は素晴らしく、現在でも学生は古典の教材として暗唱しています。ゴザル言葉の古語です。
今回はドビュッシーがバリトン(男声)のために書いたヴィヨンらしさ溢れる曲を歌います。
ヴィヨンの詩による最初の曲は、彼に母からの頼みで聖母に祈りを捧げる―。彼自身の人生への祈りとも取れます。詩はいたって簡潔で心に響きます。ドビュッシーは中世の音階を用い、シンプルさを保ちながら後期の彼の円熟した和声を融合させています。
最後はパリ女のバラード。どの時代でもパリ女のピーチクパーチクなおしゃべりは敵なし、天下一品!! ドビュッシーとヴィヨンのフランスのエスプリたっぷりの曲をお楽しみください!
演奏曲目
Noël des enfants qui n’ont plus de maisons 家なき子たちのクリスマス
Trois Ballades de François Villon フランソワ・ヴィヨンの3つのバラード より
Ballade que Villon feit à la requeste de sa mère pour prier Nostre-Dame
母の求めにより聖母に祈るために作られたヴィヨンのバラード
Ballades des femmes de Paris パリ女のバラード
Pf/安田 結衣子